ドミニカ共和国の育成システム

ドミニカ野球留学

ドミニカ共和国では日本とカテゴリーが異なる。

18歳以上 渡米
16歳以上 アカデミー(MLBの9軍)
13~16・17・18歳      プログラム
6~12歳 リーガ

アカデミー(高校年代)

ドミニカに行って初日、ドジャースのアカデミーに行った。年代的には日本でいう高校野球と同じ年代だ。

だが、球場の様子は全く違う。県大会でさえ、満員で外野席を開放する日本の高校野球と違い、ドミニカのアカデミーはチームメイトと関係者、そして少しの家族と思われる人々くらいしか観戦者がいなかった。

ピッチャーはストレートを中心に思い切り投げ込む。バッターはとにかくフルスイング。もちろん勝つために送りバントもあるが、基本的には積極的な野球が続く。

盗塁もガンガン仕掛ける。

当然そのような野球のスタイルなので、失敗も多いのだが、チームメイトも指導者も励ますだけで、咎めるようなことは何もない。

事前に少し勉強していたので、あまり不思議に思わなかったのだが、彼らは25歳になった時にMLBでプレーする事を目標にしているのだ。

だから、目先の試合の勝利を絶対とは考えていない。もちろん勝ちは目指している。一点差で負けていれば前進守備も敷く。だが、勝利を一番には考えていない。

これには、大会がトーナメントではなくリーグ戦だということも大きく影響していると思う。

この日はパイレーツのアカデミーと試合が行われていた。



メジャーリーガーの卵なのでアカデミーの選手たちは体も大きく、動きも素早い。フルスイングでとらえれば打球は外野を越えるし、ホームランも出る。

だが、日本の高校と試合をやったら、おそらく半分以上は日本の高校生が勝つだろう。

しかし、さらに年代が上がると、いつの間にか、日本よりも中南米の選手が勝つようになるだろう。そこが大きな問題なのだ。

目指しているところも25歳の時のMLBと18歳の時の甲子園ではまるで違う。すべてをドミニカのような仕組みにすることは難しいと思うが、歩み寄る姿勢、学ぶ姿勢は大切なはずだ。

日本の高校野球がこのようになるのはおそらく相当な時間がかかるだろう。一野球ファンとして、別に今のままでいいような気もするが、一野球ファンだからこそ、高校野球はこのままではいけない。




ちなみに、現地に行くまで、自分も誤解していたことなのだが、アカデミーの年代では決してバントやエンドランなどがないわけではない。

もちろん日本の高校野球ほど細かくはないが、カットプレーなどもしっかりと練習されていることがわかる。

チームとして勝つための戦術などはこの年代から各球団のアカデミーで教え込まれるのだそうだ。

プログラム(中学生+一部高校生)

プログラムでは先ほど紹介したアカデミーに入るために、13歳からの選手たちがプレーする。16歳からアカデミーで契約できるらしいが、契約できなかった選手は17,18歳になってもプログラムでプレーし続けることもあるらしい。

今回僕は、アカデミーに入るためのトライアウトの場に偶然立ち会うことができた。

ここで見られるのは個人の技量と伸びしろだ。順番にバッティング、守備、キャッチャーのスローイング、ピッチング、およそ54mの駆け抜けタイムを見られる。

動きの柔らかさも大事だが、とにかく肩の強さやスイングの強さなど、身体の強さをチェックされる。なので外野からの送球や内野の一塁転送も、捕る方が可哀想だというくらい思い切り投げる。

グラウンドが石だらけでデコボコなのにキャッチャーの子は良く捕っていたと思う。

そもそも、ドミニカの選手には緩く投げるという概念がないのかもしれない。

プログラムの練習ではアップとキャッチボールを30分ほどかけて行う。キャッチボールでは初球から指にかかった速いボールを投げる。

アカデミーの試合でも野手がピッチャーに返球するとき、グローブが押されるようなスピンのきいたボールを返していた。



バッティングではセンターを中心に強いライナー性の打球をはじき返す。

周りの選手全員とスカウトが見ている中であれだけ振れるのは普段から思い切り振っている証拠だろう。

見た感じではわからなかったが、彼らはその日、かなり緊張していたらしい。

それもそうだ。夢見ているMLBへの最初の道が開かれようとしているのだ。いくら楽観的なドミニカ人でも緊張しない方がおかしい。

ただ、このトライアウトは一回の視察で決めるようなことは絶対になく、数年かけて成長度合いも含めて、アカデミーに上げるかどうかを決定する。

このプログラムではトライアウトの合格を目指している。だから練習はとにかく個人の技量を伸ばすことを第一に考えて行われる。

シートノックなどはもちろんない。

連携や、細かい動きはアカデミーに入ってからそれぞれのMLB球団で教わる。ゴロ捕球、打撃練習(BP=バッティングプラクティス)などの基本的な練習を3時間ほど行ってその日は終わりとなる。

リーガ(学童野球)

リーガは日本でいう学童野球の年代だ。メジャーリーガーになる為、野球が上手くなるために一番大事なことは何か?

日本で言う「手ゴロ」を繰り返し行っている。

阪長さんの本にはこのようなことが書かれている

MLBで長年にわたって活躍するためには、どんなことが必要でしょうか?
 実は以前、私もこの質問をされたことがあります。ドミニカを訪れて、ドジャースのアカデミーで25年以上指導されているアントニオ・バウティスタさんと初めて会ったときのことでした。バウティスタさんは自身もクラスAでプレーし、指導者としてはドミニカ出身選手として初めて3000本安打を記録したエイドリアン・ベルトレ(テキサス・レンジャース)やカノらを育てました。
 そのバウティスタさんにこう言われました。
 「MLBで活躍していこうと思ったら、体力、パワー、技術、スピード、メンタルなど、いろんなことが必要だ。でも“絶対にこれだけは欠けてはいけない”というものがある」 
 バウティスタさんに言われて考えてみると、例えばスピードがなくてもパワーがあれば、スラッガーとして大成することは可能です。逆にパワーがなくても、スピードでアピールすることもできる。
 では“これだけは絶対に欠かせないもの”とはなんでしょうか。
「その選手自身が野球という競技を心の底から好きか、どうかだ」
 バウティスタさんは、ドミニカで選手たちに「自分はこの競技が好きだ」という思いを身につけてもらうためには、とくに小学生のときが重要だと言います。小さい頃に「野球は楽しい。また明日もプレーしたい」と思ってもらうことが、のちに中学生、高校生、プロの選手になった時に活きてくると言うのです。

阪長友仁『高校球児に伝えたい!ラテンアメリカ式メジャー直結練習法』

これはドミニカに限った話ではない。自分の野球を始めたころを振り返ってみてもそうだ。放課後に友達と小学校の校庭や広場で野球をして遊んだのが自分の野球の原点だ。

実際に現地で見たドミニカの小学生は本当に野球が好きなのが見てわかった。コーチが転がしたボールをとる基本的な練習もものすごく楽しそうにやっている。

中学生程の子の打撃練習の守備につくこともあるのだが(硬式ボールで打球も早く危険な場面もあった)、打球をとれなくても必死にボールを追っている。

日本の小中学生にロングTの守備をやらせても、あれだけ熱心にボールを取り合ってまで追いかける子はほとんどいないのではないだろうか。

野球以外にやることがないという環境もあるのかもしれないが、ドミニカの子供たちは短時間の練習を心から楽しんでいる。

野球を好きだという気持ちは、大きくなったときに、「どうやってアウトを取るか」、「どうやったら打てるようになるか」など、自分でより良い方法を考えるときの原動力になるのではないかと思う。

学童の時期にグラウンドに怒声が聞こえるような状況は一刻も早くなくすべきなのだ。

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