【読書録】ラテンアメリカ式メジャー直結練習法

読書録

2019年8月7日、僕はメキシコ行きの飛行機で太平洋の上を飛んでいた。

機内食が二回も提供される、13時間の長期フライトだ。

どうして、メキシコに行くのか?

今回、メキシコは目的地ではない。トランジット―乗り継ぎ―で使うだけだ。
最終的な目的地はドミニカ共和国。自分の野球の指導の幅を広げるために、中南米の野球をこの目で見たいと思ったのだ。

この記事では、その飛行機の中で、読んだ一冊の本について紹介しようと思う。

阪長友仁さん

まずこの本の著者である阪長友仁さんの紹介をしたいと思う。

阪長さんは株式会社プロスペクトに所属し、ラテン・アメリカの指導法を全国に伝えるセミナーや講演を行いながら、中学硬式野球チームの境ビッグボーイズでコーチをしながらラテン・アメリカの指導を実践している方だ。

それ以前の球歴も素晴らしいもので、高校時代は新潟明訓高校で1999年の夏には甲子園出場も果たしている。その後は立教大学に進み、4年時には主将も務めている。

その後、運送会社で数年務めたのち、海外の野球普及活動を開始。

2006年にはスリランカやタイなどのアジア諸国でナショナルチームのコーチを務め、翌年にはアフリカ・ガーナ代表の監督を務めた。

その後、海外青年協力隊として南米コロンビアに2年間、JICA企画調査員として、グアテマラに3年間赴任している。その活動の中で、同じくスペイン語圏の中南米国であるドミニカ共和国の指導方法に感銘を受け、現在の活動に至っている。

第一章 育成システム

ドミニカ共和国(以下ドミニカ)での選手育成と日本でのそれの一番の違いは、「どこを見据えているか」だ。ドミニカでは、選手も指導者も25歳の時にMLBで活躍することを第一に考えている。だから、日本の高校野球にあたる年代のサマーリーグでもミスを責めるようなことは一切なく、「また、次積極的にいけよ」といった言葉が指導者から掛けられる。

ドミニカでの指導がどのようなカテゴリに分けられていて、どういう仕組みでMLBを目指すのかが詳しく書かれている。

※別の記事では体験談を交えて、第一章の内容も引用しながらドミニカの育成システムを紹介している。

第二章 守備編

ここでは主に内野ゴロのさばき方が紹介されている。

海の向こうの選手たちはどうしてあんなにグラブさばきが柔らかいのか?

その答えは、この本で理解できる。

グラブを立てるというのはよく聞く指導だが、人間の体の構造上間違っている。勉強している人は、一昔前のゴロの捕球体勢が理にかなっていないことはお分かりだと思うが、何のことかわからないという人はこの本の2章だけでも読む価値はある。

個人的には2章の「ダブルプレーのとり方」がとても勉強になった。二遊間の出身でもない限り、バリエーション豊富なダブルプレーの動きを指導するのは難しい。


僕は色々な人に聞いて、自分の中で大体のことは確立させていたが、この本を読んでさらに指導できる内容が広がった。

メジャーリーガーがスーパープレーを魅せられる理由もこの本の2章でわかった。

もちろんフィジカルも関係しているのだが、それだけではない。

試合中の誰も思いつかないような発想力に富んだプレーは、地道な練習の積み重ねだったのだ。

中南米と日本ではそもそも基本の概念が違う。逆シングルも、ベアハンドも彼らにとってはすべて練習しておくべき技術なのだ。

身体に覚えさせておくことで、いざ、試合で打球が飛んできても様々な動きで対応できるのだ。

これを読んだら、「体で止めろ」なんて言えなくなる。

もちろんボディストップが必要な場面もあるだろう。だが、少なくとも内野ゴロを「体で止めろ」と怒鳴ることはなくなるはずだ。

この本のタイトルは『高校球児に伝えたい!ラテンアメリカ式メジャー直結練習法』なのだが、個人的には「学童野球の指導者に伝えたい!」。また、中学の指導者も同様に頭に入れておくべきだろう。

第三章 打撃編

筆者の阪長さんは日本野球における金属バットの弊害について説いている。木製バットに比べて反発係数の高い金属バットのもたらす弊害はいくつもある。

その中の一つとして、日本人が国際大会になると急に打てなくなることが挙げられる。これは筒香選手も著書の中で言っていることだが、海外の「動くボール」に対応できなくなるのだ。

一般的に高校生までが使う金属バットは、バットのどこで捉えても、どの様な形で捉えてもある程度打球が飛ぶ。

それに対して、木製バットはインサイドアウトで、体の中(=体の近く)でボールを捉えないと力強い打球は飛ばない。

甲子園の最多本塁打記録を塗り替えた都市の侍ジャパンU18選抜も国際大会になった途端に打てなくなってしまったのにはこのような原因があるのだそうだ。

この本では木製バットで力強い打球を打てるようになるためのスイングや練習法が紹介されている。

その打ち方をすると金属バットで打てなくなるということは決してない。金属バットに頼らなくても強いボールを打てるスイングを身につけよう。

金属バットを使い続ける場合にも、マイナスにはならず、プラスしかないはずだ。

第四章 投手編

投手は、強いボールをアバウトでもゾーンに投げることが求められる。

変化球や細かいコントロールはもっと上のカテゴリに行ってから覚えればよいのだ。

また、ドミニカでは、25歳の時の活躍を大前提に指導しているので、投げ過ぎるということは絶対にありえない。

今年に入ってから、球数制限の話題がネットニュースを騒がせている。ドミニカではぞんなことは当たり前なのだ。

MLBが示したピッチスマートという年代別の球数の指標も紹介されているので、育成年代の指導にあたるという人はチェックすべきだ。

第五章 指導編

ここで書かれていることは「リスペクト」だ。

日本では選手から指導者に対してのリスペクト、あるいはそう見えるものは存在するが、。逆は少ないのではないか。

だが、ドミニカではフラットで、双方にリスペクトがあって指導が成り立っているのだ。

ただ、ドミニカでは選手から指導者、指導者から選手へのリスペクトはあっても審判に対するリスペクトは皆無だと感じた。

これには個人差もあるのかもしれないが、少しでも怪しい判定だとすぐに「くそ野郎」「盲目」といったヤジが飛んでいた。

アカデミーの高校生は退場させられていた。

日本の高校球児が審判への侮辱行為で退場などということはまずないだろう。

最後に

これは興味のある人がいるかわからないが、各章の最後にはコラムがあって、ドミニカのちょっとした小話が挿れられている。

これがなかなか面白い。自分も現地に行ったのでわかるが、本当に日本と違い過ぎて、何をやっていても驚かされる。異文化の面白話を読みたい人は、コラムを楽しみに各章を読み進めるのもよいだろう。

内容は、自分がちょうどドミニカ共和国に行くときに読んだということもあるかもしれないが、とてもためになるものだった。

前にも書いた通り、「高校球児に伝えたい!」というよりは、「学童・少年野球の指導者に伝えたい!」内容だと感じる。

選手だけでなく、指導に関わる人にはぜひ読んでもらいたい一冊だった。

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