こんにちは。育成年代のスポーツにおいて、勝利をどうとらえるべきなのか。今回の記事では、「価値を追い求める」ことについて、独断と偏見で考えたことをまとめていきたいと思います。
中学野球志村ボーイズの指導
高校野球さながらの泥臭いチーム
今回の話は、雑誌「ベースボールクリニック」の2023年5月号の付録でついてきた「中学野球クリニック」という冊子で紹介されていた、志村ボーイズ(旧志村球友会)の特集を読んだのが考えるきっかけでした。
中学野球関係者ならわかると思いますが、志村ボーイズは非常に伝統あるチームで、“厳しいチーム”という印象を持つ人が多いと思います。
荒川の河川敷のホームグラウンドにお邪魔すると坊主頭のハキハキした選手たちが、出迎えてくれます。「ザ・高校野球」という感じです。見ればわかる鍛えられたチームで、2023年春には全国大会にも出場しています。
「勝利をもってこそ…」
強豪志村ボーイズの礎を築いた天野監督いう方の教えで、現在もチームの指導理念となっている言葉があるそうです。それが、「勝利をもってこそ、最高の教育が可能になる」というもの。
沓澤代表はこのように指導方針を説明する。「モットーは、勝負にこだわっていく。勝つことによって子どもたちに何かを与えられるものがあると思います」。
ベースボールクリニック2023年5月号別冊付録「中学野球clinic」17頁 ※強調は後付け
佐藤稔監督は「日本人とは? という部分を一番大切にしています。勤勉、努力を惜しまない、人に優しく、謙虚……。“ベースボール”ではなく、“野球”をやっています。自己犠牲的な精神を尊重し、怠慢なプレーは許しません。ですから、いまの時代には合っていない(笑)。(選手たちは)練習は面白くないはずですが、勝つと面白い。そこを目指しています」と語る。
本当に伝えたいことを伝えるために
野球の技術以上に、挨拶や礼儀や、道具への感謝など、それぞれの指導者が伝えたいことはたくさんあると思います。
相模原ボーイズの指導者を見ていても、自分を含めて野球以外のところに本当に伝えたい思いを持っている人が多いと感じます。高校野球を終えてチームに戻ってきて、「中学生の頃からここまでこだわればよかった…」という想いをぶつけているコーチもいます。
若いコーチの役割について考えてみた。(別記事リンク)
ですが、中学生はとにかく野球がうまくなりたい。勝ちたい。ついつい面倒くさいことを後回しにしてしまいがちです。道具を雑に磨いてきて叱られている選手もまだまだうちのチームにはいます。
大切なことって往々にして面倒なんですよね。しかも、その大切さに気付くのがずっとあとだったりするわけです。
だから指導者に求められることは二つ。
嫌われても良い覚悟で本当に大事なことは繰り返し言い続けること。そして、子どもたちが目先で求めている技術の上達、チームの勝利にもしっかりと向き合うこと。
僕自身、ここのスキルがまだまだだなと思うので、こうして学び続けなければいけません。
勝利至上主義
勝利を追い求めることが悪いことか
よく、勝利至上主義は良くないとメディアで言われます。最近では、育成年代のスポーツ現場では「勝ちを求めるのは良くない」という風潮も流れ始めました。
確かに、大人だけが勝ちを追い求めるのはよくない。そこには、子どもたちは酷使している状況があったり、そもそもそこに集まっている子どもが勝ちよりも競技を出来る喜びをもとめているということがあるかもしれません。
ですが、子どもたちと向いている方向性が一緒であり、安全性が保たれていて、子どもたちの未来まで考えたうえで今を見れているのなら、大人もどんどん勝ちを目指すべきだと思います。そうしないと伝わるものも伝わらなくなってしまう。
勝利主義、勝利追求主義、色々な言葉がSNSでは飛び交っていますが、勝利至上主義に代わる、大人も子どもも健全に勝ちを追い求めるという意味の言葉が定着してほしいなと思います。
野球というスポーツ
公認野球規則の1.05には「各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。」と書かれています。
野球というスポーツがそもそも、勝ちを目的とするスポーツです。というか、スポーツとはそういうものでしょう。スポーツマンシップにのっとって、ルールの中で勝ちに向かって工夫する。それが面白いわけです。
その工夫の中で、子どもたちには成長してもらいたい。結局、精神年齢が高くならないとそういった工夫もできないので、大人度をあげていくために、普段の私生活でも細部までこだわろうじゃないか、という話ができるんだと思っています。
WBC栗山監督の優勝記者会見の言葉から
栗山監督は大谷翔平選手がトラウト選手を三振に切って取り、ジャパンが世界一に輝いた後の記者会見でこのように話していました。
「勝たないとなかなか伝わらないことがある」
これは、選手に向けてではなく、国民へ向けて野球の魅力が伝わらなくなってしまうという文脈でした。
栗山監督は、「娯楽の多様化と少子化、野球界の悪しき慣習の影響もあって野球の競技人口が減っている今の日本に、何とか野球の魅力を伝えることがWBC日本代表の一つの使命だ」と考えていたようです。
僕たちが野球の魅力に気付いて、大人になった今でも楽しんでいられるのは、今のNPB(日本っプロ野球)で監督コーチをしている世代に選手たちが、プロ野球を盛り上げてくれたからでしょう。
もちろん、高校野球も盛り上がりますし、社会人野球のハイレベルな戦いも、大学野球もそうです。育成年代に影響を与える格好良い存在であるべきプレーヤーが、クリーンに勝ちを追求して工夫するからこそそこに感動が生まれて、少年少女の心を動かしていきます。
勝ちを追い求めるということは、現在野球に打ち込んでいる子たちがより人間的に成長するために必要なことですし、まだ野球の魅力を知らない人たちに、その魅力を伝えていくためにも必要なことだと思います。
毎月定期購読している、ベースボールクリニックの付録冊子からの学びをまとめた記事でした。本冊も毎回非常に勉強になるのですが、中学野球にフォーカスした付録は身近な話題が多く、共感しやすい内容でした。
僕はベースボールクリニックという雑誌を富士山マガジンというサイトから定期購読しています。興味のある野球指導者・プレイヤーの方は是非覗いてみてください。
相模原ボーイズについて
普段は相模原ボーイズという中学硬式野球チームで指導者をしています。子どもたちも大好きな野球に懸命に打ち込んでいます。チームのホームページもぜひのぞいていってください!
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