三月のとある日曜日。僕は夢のような3時間を過ごさせてもらった。
畑と資材置き場に囲まれたホームグラウンドには、毎年桜が咲くころになると、風に巻き上げられた砂ぼこりが舞う。
この季節は、卒団式も終わった中学三年生は徐々にチームを離れ、何とも言えない寂しい空気が漂う。その一方で、新たな仲間が加わり、賑やかな季節でもある。
だが、その日だけは特別な懐かしさがそこにあった。
活動自粛の日々の中で
「現役の高校生に限って、グラウンドを使用させていただけませんか?」
活動自粛で思うように練習ができないOBが、少しでも調整できればいいなという思いから、代表に打診した。いや、それだけじゃない。僕が彼らの野球を見たかった。指導するわけでもなく、ただ見ていたかった。そんな自己満足でもあった。
許可をもらい、新高校2.3年生に話を持ち掛けると、やはり多くのOBがグラウンドに来ることに。たったの3時間だが、硬式を思い切り投げて、打つことができれば十分だろう。
なかなか練習する環境もなかったというので、いくらかは喜んでもらえただろうか。
二度と戻らないはずの風景
結果として新高2・3年生が合わせて8人集まった。まず、久しぶりに顔が見れたことが嬉しかった。
そして、彼らが再びあのグラウンドで、楽しそうに野球をしているのを見ることができて、何よりうれしかった。あの頃と同じように黄色いかごに座り、ビニールテープで巻かれたボールを、決してきれいとは言えない緑のネットに打ち込んでいく。
やはり打ち方や動きは中学生のころと変わらない。だが、その打球はたくましさを感じさせるほどに力強かった。特に新高校三年生はさすがといったところだ。
また、別々に卒団していった二学年が同じ場所に立っているというのがおかしかった。二度と交わることのないはずのものが、同じ場所に戻ってきて、野球をしている。
彼等にとっては、大したことではなかったかもしれない。だが、僕にとってそれは涙が出るほど懐かしい光景だった。
この場所を残さなければいけない
高校野球のこと、学校生活のことを話していると一人の子が、「卒業したらボーイズに戻りたい」と話していた。もう一人、自分もやりたいですと言ってくれている子もいる。
そんな嬉しいことを言ってくれる後輩(?)教え子(?)仲間(?)のためにも、このチームを何があっても残さなければいけないと思う。
別にコーチになってくれる子だけではない。こうやっていつでもチームに戻ってきてもらえるように、いつまでもその場所にあり続けなければいけない。
たったの3時間だったが、何にも代えがたい貴重な時間だった。
ありがとう
いつも卒団式の時には感謝の気持ちを伝える。今回も同じように、元気にグラウンドに戻ってきてくれたそのことだけに感謝の気持ちでいっぱいである。こんなことは今後ないだろう。
また活動が始まったら短い高校生活に全力で向き合う姿を風のうわさで聞きながら応援しています。
そして、またいつでも戻ってきてください。
現役中学生へ
コロナウイルスによる休校期間、中学生の皆も練習ができたらよかったが、やはり色々なきまりの為それは難しかったということは理解してください。また、元気に活動できるようになったら頑張りましょう。
新高1はこの時期に練習できないのは痛手だったけど、入ってからが勝負。先輩たちに負けないくらい全力のスタートダッシュを。
コメント