野球はマルチタスク!『ライフキネティック』という考え方

中学野球

二死走者二塁。あなたは同点のランナーだ。カウントは2-2。一球前のファールの時に確認したら、相手の外野手はそこまで前進していなかった。セカンドはベースに入る様子はなさそうだ。ショートの気配を感じつつ、味方のコーチャーのききなれた声に耳を澄ます。ベンチからは「一本で帰れ」の声。相手のキャッチャーは肩が良いので、バッターが振らずにボールだったらすぐにベースに戻らないと刺されてしまう。だが、打った時のスタートが遅れると、ホームに生還することは難しくなる。ボールがホームベースの上を通る瞬間に全神経を全集中しなければ。。。

野球はマルチタスクだ!

野球に限らずスポーツはマルチタスクを処理する能力が求められる。それもめまぐるしい速さで移り変わる状況の中で、正確に判断をして、それを正確に身体動作で表現することが求められる。

こうやって文字にするとかなり難しそうだ。だからこそ、頭で考えるのではなく体が動くように訓練しなければいけない。

ドイツ発祥、『ライフキネティック』

ライフキネティックは目で見たり耳で聞いたりした情報を頭で判断して、それを自分の体で表現する能力を向上させるトレーニングだ。発祥はドイツで、サッカーの代表チームでも取り入れられているという。

確かにサッカーもかなりのスピード感でゲームが進む中で、様々な情報を処理して瞬時に体を動かす能力がも求められる。

現在では、日本やヨーロッパ・アメリカにもライフキネティックが普及している。

ライフキネティックで得られる効果3つ

視覚機能の強化

野球にとって、目から入る情報は最も重要だ。

打者は球技の中でも小さい、あのボールが高速道路の車並みの速さで近づいてくるのを、一瞬で振るか降らないかを判断して、そのうえでバットの芯にあてることが要求されるのだ。

また、このような動体視力に加えて、周辺視野というのも非常に大切になってくる。僕は現役時代キャッチャーだったのだが、投手のボールを受けながら、ランナーが飛び出したことに反応するのはまさしく周辺視野の広さに関わる話だったと思う。

野球選手は様々な場面で、集中すべきところに集中しつつ、その周辺にもアンテナを張っておくことが求められる。

それができないと「センスがない」という話になってしまうのだが、それならこのライフキネティックで少しずつ鍛えようではないか。

ボディコントロール

野球選手はめまぐるしく変わる状況の中で、その変化に対応して、しかもスムーズに、時には複数の動きをすることも必要になる。

ピッチャーゴロのファーストベースカバー。ピッチャーは走りながらトスされた勢いのない捕りづらいボールを正確に捕球して、しかも正しくベースを踏んで、素早く打者走者とぶつかることを防がなければいけない。そのうえ、二塁走者がいたりすると、すぐにホームに体を向けないと、あっという間に走られてしまう。

これだけの動きを当たり前にできないと、勝てるようにはならない。


こんな動きをしようと思っても体が思うように動かないと意味がない。ボールを正確に捕ろうと思ったらベースを踏めなかったり、ベースが踏めたら、その後の走者のことが頭から抜けていたり。

思った通りに自分の身体を動かすにはセンスが必要だ。そのセンスは自分が体を動かそうと思って動かした経験の積み重ねだ。それを作る役割をしてくれるトレーニングの一つがライフキネティックだ。

認知機能

野球の動きの一つ一つは、その人の判断・選択の連続だ。細かく見ていけば、無数の認知の繰り返しだ。

とても分かりやすい動画があったのでここで紹介したい。

やってみることが目的

ライフキネティックは出来るようになることが目的ではなく、やってみること、トライすることそれ自体が目的なのだ。参考にしたベースボールクリニックの1月号には、「むしろできないくらいの難易度のものに挑戦し続けることが成長につながる」と紹介されていた。

それなら、指導者も一緒に動いてみたり、そのチームの雰囲気によっては親も一緒にやってみたりできそうだ。もちろん、選手だけでも声を掛け合いながら活気のある練習になるのは想像ができる。

継続が最重要

同じく、『ベースボールクリニック』では、
週1回60分程度、もしくは毎日10分ずつ継続することで効果を得られる
と書かれていた。

中学硬式野球の活動では、週1回になりそうだ。しかし、終日練習できる土日に60分を確保するのは難しいという現状もあるだろう。

出来れば、平日に各選手が意識を高く持って、10分でもいいからバットスイングと同じように継続して家庭で取り組めるよう、モチベーションがけをしていきたい。

うちのチームの取り組み

うちのチームでは、ライフキネティックという言葉は出てこないものの、同じような練習を取り入れている場面はたびたび目にする。

だが、体系的・継続的に取り入れることができているかと言われると、△が現状だろう。近年野球界は身体操作能力に重きを置く動きが見られるように感じる。

食トレでどれだけ体を大きくしても、自分の想い通りに自分を操作できなかったら意味がないのだと多くの人が気づき始めたということだろう。

今後、体の大きさを確保しつつ、しっかりと動ける選手を育てていくためにも、是非取り入れていきたい理論だ。

参考書籍など

ベースボールクリニック2021年1月号

今回はライフキネティックのほか、ペップトークについての掲載もありました。
今回も非常に勉強になります。

ライフキネティック | ドイツ公認のライフキネティックのトレーナーが続々誕生中! (lifekinetik.jp)


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