こんにちは。相模原ボーイズというチームで、日々中学生と野球をしています。今回の記事は「怒り方」についてです。先日、チームの指導者でご飯を食べている時に、「選手への怒り方がわからない」という話が出ました。今回は僕が以前、Twitterで「怒り方」について先輩指導者さんに質問したときに教えてもらったアンガーマネジメントという本をもとに、考え方を紹介していきます。
そもそも怒る必要があるのか?
そもそも野球の指導者は怒る必要があるのでしょうか。
多くの方のイメージ通り、一昔前には体罰も黙認されていた野球界。基本的に高校野球の監督ともなれば年間360日くらいずっと怒っているイメージです。
怒りが必要かどうかはその人の指導スタイルなので、正解はないのだと思います。ただ、一つ前の記事でも書いた通り、「怒るべき時に怒り、怒らなくても良いところでは怒りを抑える」というのが指導者に求められるスタンスだと感じています。
最近の風潮を見ていると、「怒鳴るのは良くない」、「怒らない指導者が良い指導者だ」という流れを感じます。確かに、頭ごなしに怒鳴るのは良くないのかもしれません。
ただ、時には大声での指導は必要だと思いますし、決して指導者が感じた怒りの感情をすべて押し殺す必要はないと思います。
大切なのは、「選手にこうなってほしい」という指導者からのメッセージを正しく伝えることではないでしょうか。
オススメな叱り方
ここまで、分かりやすいように「怒る」という表現を使ってきましたが、ここからは「しかる」という表現を使っていきます。選手・チームが昨日より今日、今日より明日、良くなってもらいたいから、「しかる」。ここではオススメなしかり方を紹介していきます。
アイメッセージを使う
アイメッセージの「アイ」は英語のI(私)です。「君が○○」ではなく、「ぼくは○○と思う」のように、叱るときの話の主語を自分にする瞬間を作ると、相手への伝わり方は大きく変わります。
2年前、うちのチームのコーチが、おそらく無意識だと思いますが、このアイメッセージを上手に使っている場面を見て、「こういう指導者と同じチームで野球ができているのは幸せだ」と思った出来事がありました。
このように、自分を主語にして想いを伝えると、伝えたい思いがあるからアツくなっているというのがその選手にも周りにも伝わります。
この時、「僕は怒っている」という伝え方はNGです。なぜなら、「怒り」は二次感情だから。人間の怒りは生き物としての防衛反応です。怖いから怒るのか、悔しいから怒るのか、その怒りの元になった感情を伝えてあげないと、子どもは何で怒られているのか、次にどうしたらよいのかを正しく感じ取れません。
一貫性を持たせる
選手にとって一番嫌な怒られ方が、「この前言っていたことと違う…」です。
野球の技術指導において、カットプレーの形や走塁の戦術については、指導者が日々学んでいく中で考え方が変わることはあるでしょう。そういう時には、選手に伝えればわかってもらえるはずです。
ここで問題なのは、例えば「この前ベルトを忘れたときはめちゃくちゃ怒鳴られたのに、今日は全然怒られてない」といったパターンです。
チーム内の決まり事や、行動ルールについての指導で一貫性がないと、選手は困るどころかその指導者への不信感を募らせていきます。
語気を強めて指導するときに、最悪なのが、「この人は機嫌が悪いから自分に怒っているんだ。」と選手が感じてしまうことです。
チームの決まりごとについては特に慎重に、毎回の対応に差が出ないようにしましょう。
ルールを明文化できるならあらかじめ一覧にして、選手・保護者と共有できるのが一番良いですね。
コアビリーフを明確に
線引きをすること
前回の記事でも書いた通り、大切なのはコアビリーフ(自分の信念)を知っておくことです。
「選手がこういうことをしたときに、自分はイラっと来る」
このラインを知っておくと、自分自身の怒りの感情と上手に向き合えるようになってきます。何度も繰り返しますが、指導者が感情的になることが悪いことだとは思いません。
むしろ、自分は大人だから、指導者だから、という理由で自分の感情を押し殺した状態(=本来の自分とは程遠い状態)で子どもの前に立ち続けることの方が問題だと思います。
※もちろん我慢する場面は必要ですが。。。
怒れない人もコアビリーフ
反対で、選手に対してうまく怒れないという人も、コアビリーフを意識すると楽になります。「これは許せない」というラインを自分ではっきりさせておくと、目の前で起こったことに対してすぐに反応して指導できます。
例えば、「挨拶の声が小さいことが許せない」「挨拶は大きな声ですべき」というコアビリーフを持っている場合には、自分でそのことを理解しておくのです。
そうすると、声が小さい選手がいたときには、自分のコアビリーフに反しているのだから、自分の「大きな声で挨拶をしてほしい」という気持ちをぶつければよいのです。
こんな風に考えていくことで、「自分で違和感を感じたのに、指導できなかった」というモヤモヤが残ることが少しずつなくなっていきます。
やってはいけない怒り方
ここからはまた「怒る」という表現を使っていきます。こちらの伝え方が悪いと、選手は「叱られた」ではなく「怒られた」と感じるでしょう。そうならないために、良くない怒り方を紹介していきます。
不機嫌だから怒る
上にも書いた通り、指導するうえでの最悪は、選手が 「この人は機嫌が悪いから自分に怒っているんだ。」と感じてしまうことです。
不機嫌な状態でチーム活動日の朝を迎えることは、誰にでもあります。指導者にもそれぞれ仕事もあれば家族もいます。恋人と喧嘩しているかもしれません。
大切なことは、自分が不機嫌だということを客観的に理解して、それを選手に投げつけないように意識して一日をスタートさせることです。
感情的に怒る
先ほどの「アイメッセージ」の話と同じです。怒りは何か他の感情があったうえでの二次感情です。その根源にあるあなたの願い、想いを言葉にしないと、選手にはただ恐怖を与え、不信感を与えることになります。
人格を攻撃する
エラーしたくてエラーする選手はいません。試合を壊したくて四球を出す投手もいません。全員が良い結果を出したいと思ってプレーしています。
「エースとしての自覚がないから打たれるんだ」という声掛けはNGです。なぜなら、自覚なんてものは目に見えないからです。
僕たちが選手に指導してよいのは、結果とその捉え方、そこまでの過程についてだけです。その時点での能力や性格について口出しする権利はありません。
ただ、責任感が明らかに欠如している言動があった場合には指導する必要があります。その場合にも、「責任感が欠如しているように見えている」という伝え方で伝えるようにしていきたいですね。実際にその子が感じている責任感なんて、どれだけ優れた指導者にもわかるわけがないので。
人前で怒る
大学4年生の頃、ドミニカ共和国に野球の指導を学びに行った時、現地のアントニオ・バウティスタさんという指導者に、指導の際に気を付けていることを聞いたことがあります。
その際の話の中で、「決して選手を他の選手の前で怒ってはいけない」という話がありました。この話については、ドミニカで僕の面倒を見てくれた阪長友仁さんという方の著書にも同じ話が載っています。
一塁まで全力疾走しなかった選手がいた場合、一度目は誰もいないところに呼んで、理由を聞く。二度目に同じことがあっても、個別に話をして約束をする。三度目があった場合には、チームに悪い影響が出るため、全員の前で話をする。この三回の指導が選手へのリスペクトの表れだといいます。
実際にチームで指導していると、その場で全員がいるところで指導しなければいけないだろうと感じる場面は出てきます。大切なことはこの「三回」という数字をうのみにするのではなく、選手へのリスペクトと信頼という本質を理解するところにあると思います。
過去のことの理由を聞く
人は過ぎ去ったことにとやかく言われると、素直に話を聴けなくなります。
とくに試合中に、「先週も○○だった」「なんで、初回に△△しなかったんだ」と、過ぎ去ったことの理由を聞かれると、すごく責められている感じがしてしまいます。
試合中であれば、ひとまず「次に何をしたらよいか」を考えることが大切です。チームを強くしていくには、終わったプレーを振り返ることも大切なので、イニングの切れ目の落ち着いたタイミングや、試合後に、「どうすれば良かったか」を話せるようにしたいです。
大学の頃の教職課程の授業で習ったのですが、指導する際の「なぜ」という言葉を「何を」に置き換えるだけで、子どもの受け取り方が大きく変わるそうです。
まとめ
ここまで、怒りの感情についてみてきました。怒りも含めた自分の想いを伝えることが、子どもたちにとっても良いことであり、野球に携わり続ける僕たち指導者にとっても良いことだと思っています。
そして、時には厳しい言葉で「自分が正しいと思ったこと」を伝えていくわけですから、指導者は常に学び続けなければいけません。どんなに時間がないときでも、本1ページ分でも、昨日より成長した自分で子どもたちの前に立ちたいですね。
普段は相模原ボーイズという中学硬式野球チームで指導者をしています。子どもたちも大好きな野球に懸命に打ち込んでいます。チームのホームページもぜひのぞいていってください!
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