あらすじ
余命一週間。
いや、どうやらあと一日しか生きられないらしい。
そのかわり、この世からあるものを消したらあなたの寿命が一日だけ延びる。
さあ、どうする?
というお話。
面白くて、色々考えさせられて一日で読んでしまった。
印象に残った言葉
「何かを得るためには、何かを失わなくてはね」
川村元気『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス)
「死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ。」
「僕の葬式。
僕の枕元に集まる人はどんな人たちだろうか。
かつての友達、かつての恋人、親戚、教師、同僚たち。
そのなかで僕の死を心から悲しんでんでくれる人は、何人いるのだろうか。
デートや仕事をキャンセルしなくてはいけなくて、正直面倒だと思う輩もいるだろう。
そして僕の枕元で、彼らは僕の人生についてどう語るのだろうか。
愉快な奴だった、ズボラな奴だった、意外と短気な奴だった、モテない奴だった・・・・・・
僕について、彼らはどんな思い出話を語るのだろうか。
その時に僕は気付いた。僕は彼らに何を与え、何を残したのだろうと。
僕が知りえないその瞬間のために、いままで生きてきたのだということを。
30年間も生きてきて、僕はいまはじめてそのことに気付く。
立ち並ぶ棺を前にして、はじめて気付いたのだ。
自分が存在した世界と、存在しなかった世界。そこにあるであろう、微細な差異。
そこに生まれた、小さな小さな “差” こそが僕が生きてきた ”証” なのだ。」
生と死
「死と同じように避けられないものがある。それは生きることだ。」
本の中の悪魔はそう言った。
生きることと死ぬこと。
それは表裏一体のものなのだ。
死ぬことは怖いか?
それなら生きることも同じくらい怖いことではないか?
生きることから逃げ出すことはできない。生きている以上は。
当たり前のことのようだが、すごく恐ろしいことのようにも聞こえる。
生きていくことは時に、寂しいし、怖いし、つらいし……逃げ出したくなることは一度ではない。
それでも、生きていくことからは目を背けられないのだ。
言い換えると、自分からは目を背けられないのだ。
どんなに嫌な自分でも、死ぬまで一緒に生きていかなければいけない。
それって、死ぬことと同じくらい恐ろしいことではないか?
人生が素晴らしいものかは終わってみないとわからないが、それなりに大変だということはわかる。
いつか、(もしかしたら小説の主人公のようにもうすぐ)死ぬときはやってくるだろう。
そこまでの時間をどう生きるかを考えさせられる、哲学書のような小説だった。
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