【東大元野球部監督】浜田一志先生の文武両道セミナーに参加@川和高校

セミナー・勉強会

横浜都筑区の閑静な住宅街の中を車で走ると、目的地は見えてくる。周りよりも少し高い場所にある、神奈川屈指の名門校は川和高校だ。校門を通って坂道を上がると、左に野球部のグラウンドが見える。文武両道の権化のような伝統校で、これまた文武両道の大権現のようなお方のお話を聴きに行く。

はじめに

今回は川和高校の野球部員向けのセミナー参加したときの記録を記事にしていきます。

講師は東大元野球部監督の浜田一志先生。簡単に浜田先生のプロフィールを紹介しておきます。

浜田先生について

浜田一志先生について

1964年9月11日、高知県生まれ。 土佐高校で高校野球に打ち込む。引退後に東大受験を志し、東大理Ⅱに現役合格。

東大では野球部に入部し、4年次は主将として東京六大学野球リーグで活躍。大学院卒業後は、新日鉄に入社するが、1994年に独立し、東京都内に文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」としてAi西武学院を開業。

2013年~2019年まで母校東京大学野球部の監督を務め、宮台投手(湘南高校-東大-日本ハム)を擁して連敗を94で止めるなど部の強化に励む。

現在は,文武両道で東大合格を目指す高校生に、自身の学習メソッドを伝える支援活動を行っている。また、全国各地の中学・高校での講演活動も精力的に行っている。

参考:浜田一志 公式webサイト (hamadakazushi.jp)

セミナー参加のきっかけ

今回、県立川和高校の野球部監督である平野太一先生に、セミナーに参加するきっかけを頂きました。川和高校と言えば、神奈川県の高校野球ファンならだれもが知る名門校です。

昨年までは伊豆原真人先生が監督をされており、昨夏は女子マネージャーがシートノックを打ったことで話題になりました。伊豆原先生はTwitterなどでの発信活動も熱心にされているので、神奈川県外の方でも知っている人は多いのではないでしょうか。

そんな、川和高校の監督に2022年冬から就任されたのが平野先生です。前任は県立瀬谷高校で、僕の妹がマネージャーとしてお世話になっていました。そのつながりでドミニカに行くヒントを頂いたり、過去にもセミナーに誘っていただいていました。

今回も、平野先生に年始の挨拶で自分自身の人生における大きな決断を報告したところ、「ピッタリの講演会がある!」と電話で言っていただき、特別に部員とその保護者対象のセミナーに参加させていただきました。

監督の想い

まず、なぜ川和高校に元東大野球部監督が来るのか?そこには平野先生の、「川和高校の生徒にこれからの世界を引っ張るリーダーになってほしい」という想いがあります。

県立高校から甲子園という目標を掲げている川和高校の野球部員にとって、最高学府であり野球もトップレベルという環境においての文武両道の話は絶対にプラスになるということで、今回のセミナーが実現したそうです。

セミナーで得た学び

文武両道とは

まずは人間の成長過程の話からセミナーがスタートしました。通称「エリクソンの発達段階説」と呼ばれるものです。

人は生まれてから周りの人とのかかわりの中で、色々な感覚を身につけていきますが、大きく分けると下に紹介するような8つに分けることができるそうです。

8つの発達段階
人間の発達過程
  • 乳児期
    信頼性

    生まれた瞬間、無力な赤ちゃんは「オギャア」と泣きます。そこに母親をはじめとする周りの人が愛を向けてくれることで、絶対的な信頼感を手に入れます。

  • 幼児前期
    自律性

    おしっこを我慢できるようになったり、自分で衝動を抑えられるようになる時期だそうです。

  • 遊戯期
    自主性

    とにかく自分でやってみたい、色々なことが不思議に感じる。そういった時期に自主性(自発性)が育つそうです。

  • 学童期
    勤勉性

    小学校に入学し、決められた時間割に沿って活動し、出された宿題をこなしたり周りの友達と協力して生活する中で勤勉性を身につけていきます。

  • 青年期
    同一性=アイデンティティ

    周りの人との違いを意識して、自分の得意なことと不得意なことを経験する中で、自分らしさ(アイデンティティー)を見つけていく時期です。

  • 初期成人期
    親密性

    しっかりとしたアイデンティティーを確立できた人は、自分らしさを失わないまま他の人と親密に関わることができます。恋愛を経験し、結婚するのもこの段階での話です。

  • 壮年期
    世代性

    自分が前の世代から受けついだ文化などをより良いものに作り替えながら次の世代に譲り渡そうとするのがこの年代だそうです。

  • 老年期
    統合性

    子育てや仕事など、役目を終えて老後を迎えるこの段階で、自分自身の人生には意味があったと思える感覚が「統合」です。

今回のセミナーで重要だったのは、青年期の同一性(=アイデンティティー)です。浜田先生によると、アイデンティティーとは「自分という存在を理解し、人生をどう生きたいかをつかんでいる感覚」のことです。

学校のクラスや部活で出会う仲間のうち、特に深いつながりを感じる友人はいますか?自分を深く理解してくれる親以外の人とのかかわりの中で、自分とは何者なのかという感覚をつかんでいくのが、中学生以降の年代です。

教育はこのアイデンティティを育てるためにあるのだそうです。東大に行くためでも、甲子園に行くためでもなく、アイデンティティを育てるために教育があるということです。

「○○という組織に所属している」という意識や「○○が得意」という感覚も、すべてアイデンティティーを育てていくのに必要なことです。このアイデンティティーを育てるための手段として文武両道がある。文武両道は目的ではなく手段なんですね。

勉強、部活動、ボランティア、幅広い多様性のなかで努力を続ける環境を作ってあげること、そのサポートをしてあげるのがかかわる大人の役割だといえるでしょう。

佐々木 正美「子どもの心はどう育つのか」 (ポプラ新書 177)

レッテルを剥がせ

決して簡単ではない文武両道への取り組みの中で、一番やってはいけないことがあります。それは「自分はこんなもんだ」と思い、決めつけてしまうことです。

中高生は失敗しても、最終的には許される環境です。自分で自分の限界を決めてはいけない。ましてや、周りの人間がその子の限界を決めるなんてもってのほか。

「あの人には勝てない」と決めつけない。まずは本気でやってみる。それが10代でしかできないことなのです。

このように、自分に限界を定めないことを浜田先生は「レッテルを剥がす」と表現されていました。

東大にいるのはどんな人たち?

日本の最高学府、東京大学には毎年3000人の合格者が出ます。そこにいる人はどんな人なのでしょうか。

浜田先生曰く「3000人中、上位1%は才能で東大に入っているが、あとは努力!」だそうです。そして、その努力というのは習慣からなるということです。

東大にいるのは、努力を続ける才能がある人達です。まして、野球部にいる人はなおさら努力のカタマリでしょう。

東大野球部に入ってくる人の殆どは野球を終えてから成績が伸びているそうです。そのために、引退までに基礎を固めておくことが大事になります。

試験とは自分ができていますと採点者にアピールすること。「できていること」と、「できていることを伝えることができること」は全然違います。

そのために、時間のない部活現役の時期にやるべきことは、学んだ内容を友達に説明できるようにすることです。教科書内容を人に説明できるようにする。この習慣がついていると、部活を引退した夏以降に学力が伸びていくのだそうです。

時間の使い方

忙しい中高生にとって、勉強と部活を両立するには時間の使い方が非常に重要です。

人間の一日で自由に使える時間は限られています。睡眠時間が6~7時間だとして、風呂に入ったり食事をしたり、生きるのに必要な時間。すなわち生理的時間がだいたい9時間から10時間です。(ここを削れるのは本物の覚悟が決まった人だと思います。

のこり14~15時間をどう使っていくか。ここに将来が大きく左右されます。

学校にいる時間で、実際に勉強している時間は5時間ほどです。その5時間を含めて、一日7時間の勉強時間が理想です。ということは一日で学校の授業以外に勉強を2時間。

浜田先生はこのセミナーでとても耳馴染みの良い指標を教えてくださいました。

7・5・3の法則

やるべきこと=勉強 7時間

やりたいこと=部活 5時間

その他の自由時間 3時間

生理的時間を除いた残りの時間をどう生きていくか。一つの指標となるのが、「7・5・3の法則」です。これを中学生にアレンジしていくのがこのセミナーを聞いた自分の使命だと思います。

勉強時間の確保のために

授業に集中

一日7時間の勉強時間を確保するために。とにかく大事なのは学校の授業を集中して聞くことです。

心から何かを成し遂げたいと思うとき、最低でも1日の3分の1の時間をそのことに捧げると、目標に近づいていきます。

ここで授業時間を無駄にすると、ものすごいロスがおこってしまうのです。

疲れている時に勉強できる科目を作る

部活で疲れてヘロヘロな状態で苦手な教科をやると10秒で寝てしまいます。気合とか根性とかそういう問題ではないです。

そこで、疲れていてもやっていて眠くならない教科」をつくることが大事になります。先ほどもあったように勉強は習慣が命なので、とにかく得意科目でもいいからやることが大切です。

得意科目を見つけるために、浜田先生は「本屋で立ち読みして1分以上読めるものが得意科目になる。飽きずに立ち読みできた教科が得意教科だ。」とおっしゃっていました。

中学生の場合には手元にある教科書で良いと思います。他の強化に比べて、読み進めていて少しでも句がない教科を疲れていても取り組む教科にしましょう。

モチベーションを保つ

モチベーションを上げるのは意外と簡単です。ただ、モチベーションには賞味期限があり、保てるのは大体1週間です。これを持続させるように工夫するのが指導者の仕事です。

この「モチベーション向上・維持」を親がやろうとするとなんだかうまくいかないケースが多いです。浜田先生もなぜだかわからないが、親がかかわると失敗するとおっしゃっていました。

モチベーションアップに一番良い影響を与えてくれるのは、同年代の友達か一つ上の先輩だそうです。なるほど、確かにそうだなと思います。

大阪桐蔭はなぜ強いのでしょうか。それは目の前に甲子園に行く先輩がいるからです。自分の目の前でノックを受けている先輩のマネをすれば自分も同じように甲子園に行けると思えるからです。

進路選択も同じ。一つ二つ上の先輩のルートが自分にとって当たり前になっていくんです。だから身のまわりにお手本を見つけることが大事になります。遠くの大谷翔平より近くの先輩だと、これまた耳に残るフレーズを頂きました。

潜伏期間を理解する

せっかく勉強していても、なかなか成績につながらない時期があります。浜田先生はその期間のことを「潜伏期間」と呼んでいました。

ここでモチベーションを落とさずに踏ん張り続けて、努力を習慣化できた人が次のステージに進むことができます。

ありがたい時間も…

以上が文武両道セミナーで学んだ内容です。

実はこの後、東大野球部の連敗を94で止めたときの練習法や考え方を教わる、野球の内容により特化したセミナーをプラス1時間聴くことができました。本当に貴重な機会を頂きました。

そのセミナーの少し前、15分ほど浜田先生と直接お話をさせていただく時間を頂きました。学習塾の経営を考えていることを伝え、様々なヒントを頂戴しました。

自分の中で、「文武両道とは何か」「文武両道を追い求める先に何があるのか」がいまひとつ言語化されていない感覚があった中でお話をさせて頂いたので、発見が盛りだくさんでした。

これ以上ないありがたい時間でした。

最後に

またもやこのような貴重なお時間を与えてくださった平野太一先生には感謝してもしきれません。生意気な言い方になるかもしれませんが、川和高校野球部、これから応援し続けます

セミナー中、前のめりになって浜田先生の話に聞き入っている野球部員の背中からも非常に大きなパワーをもらいました。セミナー後の質疑応答の時間でも勉強から野球のことまで熱心に質問する姿を見て、素直に尊敬しましたし、羨ましさも感じました。

女子マネージャーの子も非常に熱心に話を聴いていて、高い志とそこを本気で目指そうとする姿勢に、これまた心を打たれました。移動中には気さくに話ができたりと、素晴らしい心づかいも感じました。

高校野球が日本で愛され続けているのは、こういう“真っ直ぐさ”が大人に伝わるからなんだと思います。みんなでこの文化をつないでいきたいと改めて思います。

川和高校野球部の前例のない境地への挑戦に負けないよう、僕も頑張ります。

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